カテゴリ:映画( 20 )


2016年 02月 02日

『キャロル』とセクシャル・フルイディティ

パトリシア・ハイスミスは『太陽がいっぱい』などで知られる推理作家。当時(1951年)『キャロル』は女性同士の恋愛を描いた問題作とされ、パトリシア・ハイスミスの名前では出版されなかった。なぜなら、女性が女性に恋をする、そのことが犯罪同様の時代だったから。しかし、100万部売れたというから驚きだ。以後60数年を経て、いまや「SEXUAL FLUIDITY セクシャル・フルイディティ」という新語が流行中。好きになる相手の性別はそのときどきによって、流動的に変わるひとたちを指す。ジョニー・デップの娘、リリー・ローズが「セクシャル・フルイディティ」であることをカミングアウトしたことから急速に広まった。好きになるひとの性別にとらわれないという考え方=そのひとが男だから好き、女だから好き、というのではなく、そのひとはそのひとだから好き、には共感するひとも多いと思う。このたび小説は初めて翻訳され、映画は2/11からロードショー
関連リンク:1950年代ファッション 
       町山智浩 映画『キャロル』と原作者パトリシア・ハイスミスを語る
        キャロル 中条省平 5つ星
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ケイト・ブランシェットのインタビュー



by mllegigi | 2016-02-02 01:35 | 映画
2015年 10月 03日

LES CHANSONS D'AMOUR

夏と秋の境い目にまた、すてきな映画を観た。主役のルイ・ガレルって? ずっとずっと年上のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(カーラ・ブルーニの姉)と付き合っていたなんて、あまりにもフランス的でありすぎるじゃないか。テデスキ、うらやまし過ぎるじゃないか。いまはイランの若く美しい女優(監督)がパートナーであるらしい。

映画『Les chansons d'amour』はヘッドフォン・ミュージカルという新境地なのだと教えてもらった。歌を歌い出すと、いきなり別世界に飛び立ってしまうハリウッドのミュージカルとは違い、私たちがヘッドフォンをつけて街中を歩いているときと同じ視線、感覚で撮影され、登場人物が現実から離れることはない。そしてこの映画は同じ意味で、まさに『シェルブールの雨傘』へのオマージュなのである。日本では2008年東京ゲイ映画祭のとき、邦題『愛のうた、パリ』として公開された。

映画の中でキアラ・マストロヤンニが妹を想って歌う『AU PARC』は歌詞も美しく、耳に心地よく響く。秋冬に聴くのに、いちばん好きな歌だ。一度アップしたことがあったのですが消してしまったので、ふたたび。



by mllegigi | 2015-10-03 23:11 | 映画
2015年 09月 05日

楽しみにしている最新映画

これほどすばらしい映画を観たことがない、と思っても、またすぐにそういう映画が出てくる。新しく、すばらしい映画が必ず。

★Carol ケイト・ブランシェット。米で同性婚などの映画続々封切り

★The Danish Girl  エディ・レッドメイン。エディ・レッドメインに絶賛の声


Mistress America 『フランシス・ハ』の女優と監督ふたたび。

By the Sea フランス映画みたい。アンジーとブラッド。私生活もかくや。


by mllegigi | 2015-09-05 13:30 | 映画
2015年 06月 30日

アリスのままで(原題『STILL ALICE』)

難病ものは苦手ですが、これは違いました。淡々と描かれていました。この映画には弱者に寄り添って生きていくというあたたかいまなざしが根幹にあると思いました。

家族の核をなしていたインテリ女性アリス(ジュリアン・ムーア)の知性が若年性アルツハイマー病(50歳)によって崩壊していくというたいへんなことが起きます。ジュリアン・ムーアはその恐怖、困惑、いらだち、怒り、絶望など複雑に入り交じった感情を身体のすべてで表現し、「映画では、動きは感情である(motion is emotion)」をまさに演じ切りました。
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 若年性アルツハイマー病からひととき解放されたかのようにアリスが歩く、最も美しいシーン。

メイン州の海辺かしら、アリスはそこに別荘を持っていて、ふだんはニューヨークのアパートメントで暮らしています。私は『恋愛適齢期』『ユー・ガット・メール』『モナリザ・スマイル』『ワンダー・ボーイズ』『ア・フュー・グッドメン』こういった映画に出てくるアメリカの家が好き。居心地よさそうで、ごく清潔で、こじんまりしていて、ヨーロッパから運ばれてきた古い家具さえ、新大陸の空気を吸い込んで力強く蘇生するような感じがします。

『アリスのままで』でも心憎いインテリア、暮らしぶりの演出がありました。大勢集まる食事の場面、料理を作る場面、流しで洗いものをする場面、洗面の、寝室の、すべてが何気ない日常を映すもので、家族のファッションもよく考えられていました。その演出が大事なのは、家=ホームは、アリスが作り上げてきた幸福な人生を象徴しているからです。彼女はコロンビア大学でキャリアを積み、夫は医学博士という設定。アレック・ボールドウィン、どうです、このおなか、この貫禄。
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ユダヤのパン、ハーラがパンプディング用にキッチンにおかれている場面がありました。フレンチトーストだけじゃなく、パンプディングにもハーラを使うんですね。写真では彼女の手の下にちょっとだけ見えていますが、もこもこした大きなハーラでした。アリスは長年得意としてきたパンプディングの作り方を忘れてしまいます。観客はこういう事実をすこしずつ突きつけられるごとに人生は、目には見えない、ささいな記憶の集合体であることを思い知らされます。
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アリスは家族の判断で家に残ります。記憶をなくし、廃人のようになっても、なおアリスはアリスのままで人生を生き続けていきます。それは、家族がアリスの尊厳を守ったということでもありました。何はともあれ、アリスの家族は問題を理性的に対処しようとした。アルツハイマー病患者を抱える家族は介護がたいへんです。しかし、同時に患者の家族それぞれの人生も守られなくてはなりません。ラストシーンは過酷ながら、きらきら光る希望です。だれしも、現実は映画のようにはいかない、もっときびしいものであることを知っているからこそ、その希望が輝くのだと思います。映画を観て以来、アリスの言葉「live in the moment」は切実なキーワードとなりました。

家族の物語であり、母と娘の物語であり、夫婦の物語でもあることから、シェイクスピアの『リア王』を彷彿させるとか、小津の『東京物語』のようであるとか、評されているようです。

映画が終わって、フロントでぐずぐずしていると、二十歳くらいの男の子が人目もはばからず泣きながら出てきました。封切り当日の最終回に彼は一人でこの映画を観にやってきた。アリスのようなだれかが、彼の家族にいるのだと思われて、私はまた泣きました。

P.S.今日(7/8)、美容室で読んだ雑誌に「ゲイの監督が作った女性が好む、女性のための映画」(だったかな)、というようなことが書かれていて、これは言い得て妙だと思いました。感心したのは、アレック・ボールドウィンがマックブックをソファで見ているシーン。ひざの上にきれいな刺繍入りのクッションを置いています。私はいつもソファでこの体勢になっているのに、クッションをおけばよいことに気がつかず、目を丸くしました。芸がホント細かい!
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評価★★★★★


by mllegigi | 2015-06-30 23:25 | 映画
2015年 05月 29日

ちょっとだけ映画のお話

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                              写真は『フランシス・ハ』より
去年よかった映画
劇場で
『ブルー・ジャスミン』★★★★★ウディ・アレンらしさを堪能。『欲望という名の電車』の焼き直しがおみごと。
『フランシス・ハ』★★★★★「ハンパな私で生きていく」ー何というみずみずしい感性。NYライフ、NYライブ。
『インター・ステラー』★★★★★浦島太郎もミリーもこれも、時間を飛び越えるトリックになぜ泣けるのか。
『ジャージー・ボーイズ』★★★★★軽くて楽しくて文句なし。
『6才のボクが、大人になるまで』★★6~18才までを追う試みが響かない。受け止める側の感情劣化が、問題か。
家で
『はじまりは5つ星ホテルから』★★★彼女の髪型、ファッションに魅入る、それだけで十分。
『ヒズ・ガール・フライデー』★★★★TOMBOYの原型ここにあり。
『Jエドガー』★★★★好きな画質、群青色の渋いトーン。
『木洩れ日の家で』★★★★ただただ静かに描いてみせた、歳をとることの、ありのまま。
『フライド・グリーン・トマト』★★★★「これいいわよ」と教えてくれた友人はもういないけど。よかったわよ。
『アナと雪の女王』★★王子様を必要としないお姫様登場。時代を半歩先取りね。
『ファミリー・ツリー』★★★★ジョージ・クルーニーがハワイで走る。走る。走る。
『リンカーン』★(お好きな方、Sorry!)
『8月の家族たち』★★★もう一度、見直したい。
『家族の庭』★★★★★なにがこわいって、それは、ふつうのひとの常識(良識)だと思わされる。
『トップ・ガン』★★★★★まさにguilty pleasure。これを観ずして、トムのファンだと言える?
『愛のあしあと』★★★★★カトリーヌ・ドヌーブ母娘共演、歌も好き。クリストフ・オノレ監督も好き。
『グランド・ブダペスト・ホテル』★★★ウェス組には入れてもらえそうにない。。。
『それでも夜は明ける』★(お好きな方、Sorry!)
『スーサイド・ショップ』★★★★アニメをパトリス・ルコントで観る楽しみ。
『ダラス・バイヤーズ・クラブ』★★★★★ゴミ溜めに降りた神のごとく。ロック・ハドソンへのオマージュ。
『ブリングリング』★★★★ソフィア・コッポラがロスの虚栄の市を描いて秀逸。
『バーグドルフ魔法のデパート』★★★ドキュメンタリー。私の遺灰もバーグドルフに撒いて!(ためいき)
『しあわせの隠れ場所』★(お好きな方、Sorry!)
『世界でひとつだけのプレイブック』★ジェニファー・ローレンスは可愛いとしても。(お好きな方、Sorry!)
『トランス・アメリカ』★★★★★この複雑さ◎オリジナリティ◎ヒューマニティ◎ケヴィン・セガーズ◎◎◎

今年になって観た映画よかったもの
劇場で
『バードマン』★★★★ブロードウェイそのままの気迫。太鼓のリズム、ロングショット。悲喜劇。
『アメリカン・スナイパー』★★★★反戦のメッセージはわからないようになっている。やっぱり、しびれました。
家で
『ペーパー・ボーイ』★★★★★『マジック・マイク』『ダラス・バイヤーズ・・・』然りマコノヒーが止まらない。
『マッド』★★★★★いい脚本にはいい役者が!マシュー・マコノヒー、サム・シェパード、R・ウィザースプーン。
『ビフォア・サンライズ』★★★★LOVE THIS! 
『ビフォア・サンセット』★★★★★どうして、あそこで突然あんなに泣けたんだろう。イーサン・ホークのせい?
『ビフォア・ミッドナイト』★★★★中年期独特の、印象的な台詞がいっぱい。
『ハー世界でひとつの彼女』★★色がとってもきれい。アートは良い。ストーリーは?

来月観たい映画
『アリスのままで』期待!!!



by mllegigi | 2015-05-29 08:23 | 映画
2013年 02月 13日

ファンタジーが現実を超えるとき。

映画は人をどこかへ運ぶべきもの
—アン・リー監督

『ライフ・オブ・パイ』。
見終わってから1日たち、2日たち、3日がたつうちに、
いい映画だったなあ、という思いがつのってくる。
スーパーのレジに並んでいるときとか、
冷蔵庫の中をのぞいているときに、
ああ、そういえば、あれはやっぱりとてもいい映画だった、と思い返します。
クジラのシーンもトビウオもすばらしかったし、
救命ボートにはトラが堂々と乗り、
そばにつないだ、いかだのようなものに少年が乗らざるを得ない、
という共生の構図は弱肉強食のヒエラルキーを思わせて、いささかユーモラスでもありました。

227日間の漂流のあと、ベンガルトラと主人公の少年が別れるとき、
トラは、彼に一瞥もくれず、振り返りもせず、
ジャングルの中に歩み去っていきます。
リチャード・パーカー(トラの名前)のほうこそ、
大きな思いがあったはずなのに(?)振り向いてもくれなかった、
そう言って、少年は小さな子どものように泣くんです。
この場面が、長い時間、心にとどまっています。

そのためか、衝撃のラスト、という前触れにも関わらず、
すぐには衝撃を受けなかった。納得のいかない違和感はあった。
衝撃はずいぶんあとになってからやってきました。
ファンタジーが現実を拒否し、凌駕してしまっていたからだと思います。

監督はインタビューに応えて、
「トラはいろんなものの象徴です。
パイにとっての敵でもあり、恐怖でもある。
そして、自然でもあり、神でもあります。」と言っています。
そして、また、トラは少年自身でもあった。
アン・リー監督の作品に一貫したテーマ「失われた純真さ」を
ここでも、見つけることができます。
失われた純真さとは、ポジティブに言い換えるなら、大人になること。成熟すること。
ほかにも、宗教はもはや世界を救えないのではないか、など、多岐に渡るメッセージは、
観客が受け取りたいように受け取れるようになっている。
3D効果の哲学的サバイバル・アドべチャー誕生です。

by mllegigi | 2013-02-13 16:18 | 映画
2013年 01月 30日

ニューヨークを映画で見よう。

先日見つけた眠らない街ニューヨークへのラブレター
お好きな映画は入っていましたでしょうか。



リストにあった映画(この映像の中に出てくる)の邦題と製作年、監督を調べました。

『ボビー・フィッシャーを探して』1993スティーブン・ゼイリアン
『スティーブ・マーティンのロンリー・ガイ』1998アーサーヒラー
『アパートの鍵貸します』1960ビリーワイルダー
『My Favorite Year 』日本未公開作品。ピーター・オトゥール
『黒いジャガー』1971ゴードンバークス
『フレンチ・コネクション』1971ウィリアム・フリードキン
『セックス・アンド・ザ・シティ』2008マイケル・パトリック・キング
『海の上のピアニスト』1998ジュゼッペ・トルナトーレ
『フォーエバー・フレンズ』1988ゲイリー・マーシャル
『あの頃ペニーレインと』2000キャメロン・クロウ
『アーノルド・シュワルツェネッガーのSF超人ヘラクレス』1970アーサー・アーラン・サイデルマン
『キングコング』1933メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シェードザック
『ティファニーで朝食を』1961ブレーク・エドワーズ
『ワーキングガール』1988マイク・ニコルス
『恋人たちの予感』1989ロブ・ライナー
『 X-MEN:ファースト・ジェネレーション』2011マシュー・ヴォーン
『ダイハード3』1955ジョン・マクティアナン
『七年目の浮気』1955 ビリー・ワイルダー
『グッバイガール』1977ハーバート・ロス
『マペット めざせブロードウェイ』1984フランク・オズ
『フェーム』1980アラン・パーカー
『ドゥ・ザ・ライト・シング』1989スパイク・リー
『シンデレラマン』2005ロン・ハワード
『おかしな二人』1968ジーン・サックス
『星の王子 ニューヨークへ行く』1988ジョン・ランディス
『めぐり逢えたら』1993ノーラ・エフロン
『裸足で散歩』1967ジーン・サックス
『月の輝く夜に』1987ノーマン・ジュイソン
『セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク』2001ピーター・チェルソム
『マイレージ・マイライフ』2009ジェイソン・ライトマン
『裏窓』1954アルフレッド・ヒッチコック
『ミュータント・タートルズ−TMNT−』ケヴィン・マンロー
『ブレイブ ワン』2007ニール・ジョーダン
『ブロードウェイと銃弾』1994ウディ・アレン
『マンハッタン』1979 ウディ・アレン
『めぐり逢い』1957レオ・マッケリー
『魔法にかけられて』2007ケヴィン・リマ
『おさるのジョージ』2006マシュー・オキャラハン
『メン・イン・ブラック』1997バリー・ソネンフェルド
『踊る大紐育(ニューヨーク)』1949スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー
『34丁目の奇跡』1994レス・メイフィールド
『ギャング・オブ・ニューヨーク』2002マーティン・スコセッシ
『ファニー・ガール』1968ウィリアム・ワイラー
『スパイダーマン2』2004サム・ライミ
『フィッシャー・キング』1991デリー・ギリアム
『オール・ザット・ジャズ』1979ボブ・フォッシー
『アニー・ホール』1977ウディ・アレン
『ゴッドファーザー』1972フランシス・フォード・コッポラ
『ゴッドファーザー2』
『大逆転』1983ジョン・ランディス
『ゴーストバスターズ』1984アイヴァン・ライトマン
『タクシードライバー』1976マーティン・スコセッシ
『クルーエル・インテンションズ』1999ロジャー・カンブル
『プロデューサーズ』1968メル・ブルックス

そのほかこちらにもニューヨーク関連の映画が600ほどのっていますが、
これでもすべてを網羅するには及びません。

by mllegigi | 2013-01-30 17:20 | 映画
2011年 02月 06日

ギター弾きの恋

自分を好きになってくれない人を好きになるのは、
ほんとうに悲しいこと。
ショーン・ペンの「音楽にしか痛みを感じない」という
天才ギタリストぶりときたら。
いいかげんで。
でたらめで。
ちょっとだけ優しいふりをして。
最後にいちばん傷ついたのは、だあれ。

『ギター弾きの恋』を観ると
マザーグースの歌を思い出します。

「おとうさんこにゃ なりたくないよ
 おかあさんこにゃ なりたくないよ
 バイオリンひきの にょうぼになりたい。
 ききたいときに おんがくきくのさ
  きれいなきょくを もうひとつ
  きれいなきょくを もうひとつ
  おねがい あなた ひいてちょうだい
  きれいなきょくを もうひとつ」
(『マザー・グース3』谷川俊太郎訳 講談社文庫)
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by mllegigi | 2011-02-06 18:19 | 映画
2011年 01月 08日

バッファロー'66

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刑務所の服役を終えて出て来たヴィンセント・ギャロは
髪は多くて汚いし、
ぱつんぱつんのパンツに、赤いブーツを履いている。
そんなみじめな姿さえ、ファッショナブルに感じられる、
実にハンサムなひとなのである。
おまけに彼はトイレにいきたいのである。
ここでも断られ、あそこもだめ、向こうのカフェもあろうことか閉まっている。
トイレにいきたいけれどいけない、という、
妙な緊迫感から始まるバッファロー'66のタイトルは、
ギャロが生まれた町の名前、生まれた年を示す。

『バッファロー'66』でヴィンセント・ギャロは、
親の自慢の息子でありたいと願う。
『ブロウ』でも麻薬の売人演じるジョニー・デップは
切実に両親の期待に沿う息子でありたいと思っていた。
『エデンの東』のジェームズ・ディーンも
父親に愛されたくて一生懸命であった。
ここにも父と息子の永遠のテーマが隠されている。

愛が足りない男を救うのは、クリスティナ・リッチ。
この映画には無駄な画面も、無駄な言葉もひとつとしてない。
ヴィンセント・ギャロは大変な完璧主義者だと言われているそうだ。


by mllegigi | 2011-01-08 02:05 | 映画
2010年 02月 18日

エリック・ロメールに出会ったころ

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             先日、お弁当やら朝ごはんの用意で、
             キッチンがひっくり返っている朝。
             「ロメールが死んだよ」
             彼がそう言った。
             「ああ、死んだの」
             と答えたきり、会話が途切れてしまったけれど
             ロメールと聞いて、思い起こすことはいっぱいあった。

             ロメールははじめから、おじいさんだったもの。
             何しろ60歳になってから映画を撮り始めたひとだ。
             しかし、素知らぬ顔で、すさまじくエロティックなおじいさんのようだった。

             初めて観た映画は『クレールの膝』。
             うーん、へーんなの。
             変な映画だ。
             女性の膝に執着するそのフェティシズムに
             ちょっと引いた。
             好みとはいえないな。
             そんな感想しか持てなくて、
             いっしょに行ったひとたちをがっかりさせてしまった。

             それから、ずいぶんたって、
             町の小さな映画館がロメールの特集を組んだ。
             毎日通って、相当数を見ることになったのは、
             彼の最新作が『ともだちの恋人』のころのこと。
             1987年あるいは1988年だったかもしれない。
             マ**の、何という通りであったか、
             そのあたりに車を止めると、
             切り取った絵はがきのようによくできた構図で
             ****寺院が見えるところだった。
             買ったばかりの靴が、犬の糞を踏んでしまったのもその通り。
             中年のややくたびれた男女が、静かに深夜の映画館に吸い込まれてゆく。
             深く根付いた大人の文化に触れたのもそこだった。

             ロメールの作品の中で、なじみやすかったのは『満月の夜』。
             当時フランス語を教えてもらっていた18歳の女の子が、
             真冬に真っ白の果物かごをバック代わりに下げて訪ねてきたことがある。
             「まあ、その白いかご、エリック・ロメールの...」と叫んだ私に、
             まさにそれは正解で、彼女は主演のパスカル・オジェ(上の写真)という女優に傾倒しており、
             『満月の夜』がフランスのティーンエイジャーの間で、
             ファッションバイブルになっていると教えてくれた。
             また共演のファブリス・ルキー二が、
             近くのカフェに顔を出したとき、
             幸運にもちょっとおしゃべりができたと興奮気味に語ってくれたこともあった。

             日本に戻ってからは
             『夏物語』『冬物語』など彼の作品を懐かしさとともに観続けた。
             フェティシズムにも慣れるものだ。
             日常生活そのままの等身大のフランスが
             いつも裏切られることなく、そこには描かれていた。

             彼の映画でいちばん好きなのは、今でも『満月の夜』。
             私もパスカル・オジェが好き。
             次に好きなのは『夏物語』ということにしておこう。

             もうこんな軽い映画を撮る監督は出てこないのじゃないか。
             軽くて、なんと美しい、まぶしいような、洒脱な男と女の映画を撮るひとだったのだろう。
             新作が見られないのは、フランスと私の間を結んでいたものも
             だんだん曖昧に消えてしまうようで、とてもさびしい。
             『緑の光線』というのも、いい映画だったなあ。


by mllegigi | 2010-02-18 16:15 | 映画