マドモアゼルジジの感光生活

カテゴリ:本( 7 )

今『一九八四年』を読まずにはいられない。

トランプ氏が大統領にならなかったら、村上春樹の『1Q84』は読んでも、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読むことはなかったと思う、SFだし政治的だし。そこは全くプライバシーのない監視社会。過去の歴史は現在の都合のいいように書き換えられる。権力者の言うことがすべて真実になる。本当のことを知りながら嘘を信じる二重思考が求められる。全体主義を象徴するのはビッグブラザーと呼ばれる男。ソビエトのスターリンがモデル。2017年においてはアメリカのトランプ大統領もしくはスティーブ・バノン氏に近いイメージで読めるのが驚きだ。トランプ政権で最近問題になった「オルタナティブ・ファクト」(トランプ大統領就任式の動員数が史上最大だったという嘘を「別の真実」とケリーアン・コンウェイ大統領顧問が言い換えた件)が小説とそっくりと評判に。最近またコンウェイは大虐殺の作り話を流した。70年前に書かれた絶望的な未来に近づく恐怖がどんどん加速する。現実と小説が一部クロスオーバーしているので、ベストセラーになるわけです。トランプ氏の好きな水責めはないが、拷問シーンは果てしなく、読み終わる頃には疲労困憊憎しみが愛を軽々と超えるようなディストピア小説。しかし、翻って過去へのノスタルジーが黄金郷として伴走するウィンストンとジュリアのラブストーリーとして読めないものか。ウィンストンは何度もこの世界を変えられるのは「プロール」と呼ばれる人々なのだと言っている。解説はトマス・ピンチョン。
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by mllegigi | 2017-02-05 19:09 |

おいしいフランス A to Zの本

買わなくてもいい本を、買ってしまった。オランジーナ先生がサントリーのCMに出ているひとだとも知らず。だって、テレビを観ないから。彼女は「オズヤスジローのお早ようって映画が好き」なんですって。かわいい兄弟中心のそこはかとなく可笑しい映画だったような。本の中には若い恋が飛び跳ねていました。残暑の昼下がり、この黄色い清涼剤を一服。
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by mllegigi | 2016-08-17 09:22 |

ワンダ・ガアグ 若き日の痛みと輝き


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ワンダ・ガアグ(1893-1946)は『100まんびきのねこ』などで知られるとてもすてきな絵を描く画家です。ワンダは、後年、15歳から24歳までつけていた日記の原稿を自ら出版社に持ち込みました。出版にあたって、彼女と仲がよかった、作中ではアルマンド・エルマートという金髪の男の子、実際にはエドガー・ハーマン、のちに大学教授になった彼の実名を出すことは頑なに拒んだといいます。ふたりの関係をワンダは「信じられないくらい無邪気」と言っていたにもかかわらずです。1940年(ワンダ47歳)に本が出版されると、批評家たちは絶賛しました。では、エドガー・ハーマンはこの本を読んだのか、という下世話な好奇心が沸いてきます。知る由もありませんが、読んでいてほしい。これはワンダからエドガーへの最初で最後のラブレターだと思うから。彼女は、自分も友人たちも大人になった今は、何が書かれていても若いころの話だとして、客観的に出版準備をしたのだと言っていますが。。。原題は『GROWING PAINS』成長の痛み。挿し絵もたくさん入っています。

以下本文より一部抜粋
◎昨日の夕方、アルマンドが訪ねてきた。一分で上着と帽子を取ってこられるかと聞かれた。.........列車が出る前に駅に行こうと思ったら急がなければならない。私たちはYWを飛び出して、道を渡り、市電乗り場まで一ブロックを全力疾走した。アルマンドったら、駆け落ちしたと思われそうだね、ですって。
 市電を降りてから、駅まで二ブロックばかり走った。さぞおかしな光景だったことだろう。人々が立ち止まって、目を丸くして口笛を吹いたのも無理はない。私は帽子が飛ばされないようにぎゅっと頭に押し込んでいたし、ケープははためき、アルマンドの(かなり厚地の『多分新品の[格好のいい]』)上着は、後ろにたなびいていた。
 アルマンドはいった。「友だちに見られたら、『エムラートのやつ、とうとう結婚しあがったな』といわれるな」

◎一度、丘に座っていたとき、風が吹いて、アルマンドの帽子が飛ばされて私の頭に乗っかった。とても突然で、おかしかった。
*『ワンダ・ガアグ若き日の痛みと輝き』ワンダ・ガアグ著、安倍公子訳 こぐま社 カレン・ネルソン・ホイル、安倍公子の後書きを参照しました。
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by mllegigi | 2016-01-09 14:56 |

うろんな客

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我が家には、このうろんな客にそっくりの犬がいる。ブロンクスのアトリエで生まれ、日本にやってきた。目つきがきもいといわれているが、なかなか愛嬌はある。名前をアルゴンキンという。最近は身体の毛糸が毛羽立つのをおそれて、動かず、しゃべらず、全身をシャツやらスカーフで覆っている。

しかし、この絵本には、まいった。あなたと同じ顔つきね。そう言うと、アルゴンキンが読んでくれと言うので、無理矢理読んでやると、自分のことのように満足していた。うろんな客が何を象徴しているのか、柴田元幸さんの楽しい解説がついています。エドワード・ゴーリーの家には、このぬいぐるみが展示されているようです。何とか自分で作れないかなあ。一人前に白いスニーカーも履いているんですよねえ。長いマフラーもしています。
下の写真は「壁に鼻押し付け直立不動」(柴田氏訳)状態のうちの子。かぎ鼻頭がそっくり。
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『うろんな客』エドワード・ゴーリー 柴田元幸訳 河出書房新社


by mllegigi | 2015-10-07 11:21 |

ローアン・オーク邸のゆうれいーフォークナーのゆうれい話

ハロウィンの夜に。
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ノーベル賞作家ウィリアム・フォークナーほどのおじさんではないにしても。小さいころ、お話じょうずのおじさんが親族にひとりくらいいたものだ。夏休みに訪ねて行くと、蚊帳をつった寝床の中で、子どもたちがひとり残らず寝つくまで、おもしろいお話を語って聞かせてくれる。あおむけになって見た天井のあかりは、蚊帳のこまかい編み目から金色の粉がふりかかってくるようだった。蚊取り線香の匂いもしていたかもしれない。

ディーン・フォークナー・ウエルズは、フォークナーの姪。ディーンさんのお父さんは、フォークナー四人兄弟のいちばん下の弟にあたる。私などはおじの話をすっかり忘れてしまったが、彼女はいとこたちといっしょに聞いた話をちゃんとおぼえていて、フォークナーのゆうれい話を再現した。ハロウィンにおあつらえ向きの「ジューディス」はじめ「おおかみ男」「猟犬」三編が収められている。とりわけ「ジューディス」では、その白い彼女の影さえ見えたのだという。子どもたちからおとうちゃんと呼ばれていたフォークナーは、
ジャック・オー・ランタンの灯だけがゆらめくローアン・オーク邸の静まり返った表のヴェランダで、お話を読んだあと、みんなにこう、たずねたそうだ。「ジューディスのところへ行ってみたい子はいないかね?」

ローアン・オークと名前がついたおじさんの屋敷は一族の子どもたちにとって、楽しい思い出の場所になっていたようだ。「思い出の世界では、すべてが美しく、不動不変で光り輝き、そのためにわたしたちの生活は豊かになり意義をもち、愛する次の世代もまた同じように生きる意義を与えられるのです。思い出という贈りものは、いわばひとの心につきまとう天の恵みのようなものでしょう」(この本にウィリー・モリスが寄せた序文より)
『ローアン・オーク邸のゆうれいフォークナーのゆうれい話』 ディーン・フォークナー・ウエルズ 原川恭一訳/松柏社

by mllegigi | 2015-10-06 09:47 |

日曜に読む朝食の本

朝食風景ばかりを最初にブログに上げたのは、Jennifer Causeyさんじゃないかと思う。数年前に購入した彼女の本を眺めると、毎朝、撮影角度も違うし、光も違うし、器も変わる。クッキー、スコーン、ケーキのようなもの、くだもの、ヨーグルト、卵が、きれいすぎないおおらかさで並ぶ。彼女はニューヨーカー(ブルックリナー)。きっとおいしいパン屋さんから調達しているにちがいない。食欲のない日でも、Jenniferさんの朝食なら、全部いただけるだろうなあと思ってみています。Jenniferさんの本はこれ↓。ほかに『Brooklyn Makers』『Southren Makers』などがあります。以下の本は『Simply Breakfast- the art of breakfast』『Simply Breakfast more please』と『Simple Paris』(2010)。
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栄養学的には合格とは言えない家の日曜日の朝食。今日はケーキ1個でお腹いっぱいでした。
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by mllegigi | 2015-10-04 14:41 |

Tomozoさんの『ヘルプ 心がつなぐストーリー』

魅惑的なオレンジの表紙の本(下の写真)は、
米国シアトル在住のTomozoさんが下訳を半分担当された今話題沸騰の、
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(キャスリン・ストケット著集英社文庫)です。
舞台はアメリカ、ディープサウス、ジャクソン、1962年。
厳しい人種差別を受ける黒人女性と白人女性をめぐるお話。
2日で上下巻を読み終えました。ひとときも中断できなかった。
臨場感のある日本語訳が、飛び跳ねるお魚のようにぴちぴち生きています。
「強くて、温かな、女友だちのような本」とザ・タイムズは評しました。
この評価を私はとりわけ気に入っています
人種差別という深刻なテーマを内包しているにも関わらず、
物語は「女子会」さながらの群像劇を見るようでもあります。
その一方で物事をよりよく変えようとすれば、
命がけで立ち向かわなければならないときがあることを教えてくれます。
横道にそれますが、スキーターとお母さんの関係にも泣けました。
もし娘が誰かに振られるようなことがあったとして、
「あなたがどれほど聡明でやさしい子に育ったかわからない人なら、
スチュアートはとっととノース・ストリートに帰ったらいいのよ」
彼女のお母さんのように言ってやりたいと思います。
ここ1年ブログを通して親交を深めて下さった
Tomozoさんがすばらしい本を訳されたことに感激しています。
聡明な文章と卓越した美しい写真で綴られるTomozoさんのブログLiving in the NWでは、
一足早くUヴィレッジのスタバの桜が咲いています。
月末にはアカデミー助演女優賞に輝いた『ヘルプ』の映画を観るのを楽しみにしています。
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by mllegigi | 2012-03-13 15:22 |